その一方で、アメリカ人記者が「日本人ドライバーがインディアナポリス500を制したことにとても不快感を覚える」との発言をして、解雇されるという事態が発生した。
いまだ根強い世界の差別意識。
ただ、今回米紙デンバー・ポストが記者を即解雇した姿勢は世界に差別を許さない姿勢が徐々に定着しつつあることも意味している。
今回の騒動、世界で差別を受ける各界のアスリート、日本相撲界の空気について今回は語っていく。
目次
米記者が不適切投稿で解雇 差別意識の闇
インディカー・シリーズ第6戦のインディアナポリス500で優勝した佐藤琢磨選手。
国内外で称賛の声がやまなかった。
しかし、それに水を差すような事態が発生。
米紙デンバー・ポストの記者・フレイ氏が佐藤琢磨選手の活躍を快く思わないとの発言をしてしまったのだ。
フレイ氏は「特に個人的な関係はないが、メモリアルデーの週末に日本人ドライバーがインディアナポリス500を制したことにとても不快感を覚える」と投稿。これには同氏の解雇を求める声とともに批判が殺到したため、問題のツイートは削除された。
事態を重くみたデンバー・ポストは問題のツイート削除とフレイ氏の解雇を発表した。
しかしながらこの謝罪もむなしく、デンバー・ポストはフレイ氏の解雇を発表。同紙はツイッターに声明を出し、「当社の記者の一人が書いた無礼で容認できないツイートについて謝罪します。テリー・フレイはもはやデンバー・ポストの従業員ではなく、問題のツイートも当社の信条や立場を代弁するものではありません。われわれの心からの謝罪を受け入れていただけることを望んでいます」と述べた。
即時解雇の対応をしたことで、経営陣の差別発言を許さない姿勢を見せた。
個人的には記者の差別発言以上にデンバー・ポストの強い姿勢に好感が持てた。
何よりこの差別発言が日本人への差別にも適用されたことを嬉しく思う。
厳密にはアメリカ人以外の国籍への差別発言に適用されたことだ。
これがアメリカ人への差別に対してなら正直当然だろうなと私は思う。
しかし、今回は違った。
アメリカ人のアメリカ人以外への差別発言も許さない姿勢。
具体例がないので、私のイメージに過ぎないが、もし仮に日本人が日本人以外の国籍の人に対して差別発言をしたとして、解雇するまでの騒動にならないだろう。
もし、外国人力士に対する差別発言を日本人記者がしたとしてどうだろう。
おそらく即日解雇という処分はないのではないか。
もちろん、即日解雇=良い判断とはならないが、少なくとも日本人が多国籍の人を差別したとして、ここまでの問題にはならないのではないだろうか。
「韓国人に生まれなくてよかった」などという失礼な本を堂々出版してしまう差別感覚を持っている出版社があるのは非常にさみしい思いだ。
イチローもダルビッシュも 海外で戦うアスリートを襲う差別発言
今回明るみになった差別発言。
何もモータースポーツ界だけのことではない。
アメリカメジャーリーグで活躍するイチロー選手も差別発言と戦ってきた過去を告白している。
イチロー自身は「かつて僕にもありました。アイスやコインを投げつけられたんです。実際、何回かは僕の頭に当たったことがあります。彼らは耳をふさぎたくなるようなことを言うんです」 とも話している。
引用:観客の差別発言が波紋 イチローは地元紙に “自分にもあった”と経験明かす | Full-count | フルカウント ―野球・MLBの総合コラムサイト―
サッカー界など、他のスポーツでもこうした差別発言、扱いを受ける選手はいる。
こういった話を聞くたびに、海外で活躍するアスリートは肉体だけでなく、精神的にもタフなのだなと尊敬の念を抱かずにはいられない。
同時に彼らは結果で黙らせるしかないことも十分理解しており、現に結果で差別発言の一部を封じてきた。
残念ながら全ての差別意識が消えることはない。
それでも、少しずつその意識を薄れさせることはできる。
個人だけでなく、周り、特にメディアがこうした差別発言を許さない姿勢を見せることが、差別を根絶する大きな一歩になるだろう。
選手個人だけの孤独な戦いではなく、周囲を巻き込んだ戦いをしなければいけない。
そういう意味でも今回のデンバー・ポストの迅速な対応は称賛に値する。
日本相撲界も気をつけるべき潜在的な差別意識
こうした話を聞いて私が真っ先に頭に浮かぶのは日本の相撲界。
日本人横綱稀勢の里が誕生した時の異常ともいえる過熱ぶりは相撲は日本人が勝たなければいけないという意識が見え隠れする。
これだけ多国籍の力士が群雄割拠して、何度も優勝してもなお日本人が勝たないと面白くないという空気感はいささか差別的ではないだろうかと私は思う。
私は過去に何度か大相撲を国技館で鑑賞したことがあるが、日本人が外国人力士を倒した時の盛り上がり方は異常とも思えた。
真の相撲のナンバーワンを決める大相撲。
そこでどこの国の人が勝ったかどうかがそこまで大事なことだろうか。
一番優れた相撲技術を競う大会において、そこまで重要なことだとは思わない。
もちろん、相撲が相撲本来の相撲道(品格)を重んじるスポーツであることは理解する。
しかし、残念なことに、この相撲道を誤って解釈して、日本人が勝たなければいけないという歪んだ解釈をしている人がいるように感じる。
せっかく日本の文化を理解して、相撲人気回復に貢献してきた外国人力士たち。
もっと彼らへの敬意を持たなければ、いつか世界から相撲はそっぽ向かれてしまうかもしれない。
もし、外国人力士への差別的発言があった時、徹底した差別排除の姿勢を見せなければ、世界的に日本の心象は悪くなるだろう。
そんな事態がいつ起こってもおかしくない。
今回の騒動は日本人記者の方にも警鐘を鳴らすものになる。
まとめ
今回、何より残念なのは佐藤琢磨選手の偉業がこの差別騒動に話題を持っていかれそうなこと。
本来もっと取り上げられるべき話題に時間が割かれないのは非常にもったいない。
そういった意味でも今回の記者の罪は重いと私は思う。
それでは、さようなら!